〜蘇堤春暁、三潭印月、花港観魚、雷峰夕照、南屏晩鐘、印象西湖

今日は「印象西湖」という、張芸謀監督が西湖の自然を活かして演出したステージのチケットを買っていたので、その前にまだ行っていない西湖10景を回ることにした。まず岳廟の前まで行ってから蘇堤を渡る。この蘇堤というのは、堤防と言っても、一つの細長い公園のようなものであり、親子連れやカップルや観光客が大勢いる。当然無料なのだが、徒歩か自転車、又は観光用の車しか入れないようになっており、草地やゴミの掃除も行き届いている。こういうところは素晴らしい。そういえば、中国人は自転車の立ちこぎをあまりしない。橋が何か所かあるのだが、その上り坂も、座ったまま必死にこいでいる。立てば楽なのに。この蘇堤には、「蘇堤春暁」という言葉があり、春の明け方に行くのが最もいいらしい。

その後、花港公園の前で小瀛洲という西湖に浮かぶ島に渡るため、船に乗る。ここには、「三潭印月」という景勝地があり、夜に島の近くの湖の中にある石塔に火が灯ると、それが湖に映る姿が美しいらしい。この島自体も、島の中にさらに池があり、木々や古い建物の景色が一体となって非常に美しい。太陽が湖に映っていたが、それもなかなか絵になっていた。
帰りは、また船に乗るしかないのだが、その船の中から、子供がティッシュを捨てている。それを見た親は注意するどころか、次のティッシュを渡している。よく見れば船着き場には果物の皮なども浮いていた。紙や果物なら、そのうち分解されて自然に戻るだろうが、そんな問題ではない。まったく、この国の人は他人には全く気を遣わない。本で得た知識からの類推に過ぎないが、あまりに巨大な国土を治める皇帝と、地方政府や豪族、農民、異民族等の関係が複雑に絡まり合うと、自分たちの身は自分たちで守るしかない、自分たちの身内以外を信用することは無意味、という考え方になったのではないかと思う。日本もムラ社会という仕組みのため、他人への意識が高まったらしいが、こういう風に歴史上形成されてきた文化であれば、そう簡単には変わらないだろう。それでも異なる価値観の人たちと付き合っていくしかない。
  
話を戻すと、花港公園というのは紅魚池という無数の鯉がいる池などがある公園。蘇堤の南端にある。ここでは「花港観魚」という言葉があるが、読んで字のごとく、無数の鯉が池を真っ赤に染めている様子を見ることができる。まぁそれだけと言えばそれだけなのだが、他の西湖10景はある意味似たりよったりなので、その中でここは違う趣向の場所だと言える。ここの公園は入り口があるにも関わらず無料開放されているのだが、それは観光客が買う鯉の餌代で賄えるからなのだろうか。

蘇堤を渡り切った後、左に曲がるとすぐに雷峰塔がある。ここは、「雷峰夕照」と言って、夕日が当たる姿が良いらしいが、こないだ行った保俶塔とともに、西湖のどこからも見える塔である。元々は五代十国時代に作られた寺院だったが、観光地として整備されており、エスカレーターやエレベーターで塔の最上階の手前まで上ることができる。最上階からは西湖を見下ろすことが出来、蘇堤や小瀛洲が良く見える。西湖の反対側には、これまた西湖十景の一つである「南屏晩鐘」と言う、西湖に響き渡る鐘の音で有名な淨慈寺という寺も見えた。
 

その後自転車でのんびりと岳廟の前まで戻って来てケンタッキーを食べてから印象西湖の入り口へ。印象西湖は岳廟の向かいに入り口があり、チケットは200元前後。ペットボトルの水が1〜1.5元の物価水準だから、日本人にとっては妥当な値段でも、現地の人にとっては相当に高いはずだ。しかし、平日にも関わらず人で溢れていた。座席の発券システムはよくわからないが、お勧めの場所はA2、A3席の6〜8列目前後。親水席というところはもう少し高いが、水に近いだけで余り良くない。VIP席は1000元以上するらしいので高すぎる。自分はA2席の9列目という、かなりいい席だった。
ショーは自然の木と湖を活かして、光と音楽と人の演技で楽しむものであった。セリフなどはないので、言葉が分からなくても楽しめる。多少稚拙な演技や演出もあったが、本物の湖に反射する光や人の影、水を使った演技など、かなり見ごたえがあった。日本人感覚で3000円なのであれば、誰かとまた見に来てもいいと思った。各章の演技が終わる毎に観客からは拍手が起こり、中国人も芸術を楽しむ心は同じなのかと感じていたが、終わった後の座席周りの汚さにはまた閉口した。果物やら飲み物やらポテトやら・・・。まぁ日本人でも映画館などで汚していく人がいることはいるが。
      

今日は西湖十景のうち5つと、印象西湖を見ることができたので、西湖三昧の日だったと言えそうだ。