飞越老人院

今日も映画を見てみた。老人ホームを飛び出してというタイトル。
http://movie.mtime.com/155551/

前回は英語の映画だったので、聞き取りは英語、字幕は中国語という、かなり見るのに疲れる映画だったのだが、今日は声も字幕も中国語。聞き取れなかったところは字幕で追えるのでかなり楽だ。

内容は、基本的にコメディであり、喜劇。

老人ホームに預けられたお年寄りたちが、家族や院長の反対を押し切って、天津で開かれる娯楽大会(欽ちゃんの仮装大賞の中国版)に出るため、練習をして、勝手に抜け出して出場するというもの。
その練習の様子や、お年寄り同士冗談を言い合ったりするところが面白かった。

しかし、大きな問題も描写している。
老人ホームに預けられたお年寄りたちは、基本的に家族との問題を抱えていて、自分でやりたいこと(娯楽大会に出場する)に対しても、怪我をしたら責任が取れないという理由で反対される。

院長も責任感から大会への参加は一貫して反対しているのだが、勝手に抜け出したお年寄りたちを追いかける車の中で、院長は「ここの老人ホームのお年寄りたちはあと平均20年は生きる。その間、子供たちは春節の間くらいしか一緒にいられない。春節の間と言っても、一年で3、4日くらいだ。しかもその時期でも実際に話ができるのは1日7〜8時間。20年というとても長い時間のうち、こんなに短い時間しか子供たちといられないことを考えると・・・」と言葉を詰まらせる。

他にも、あるお年寄りは自分の再婚の問題について子供と確執があり、孫の結婚式に出た時に(中国では家を買うのは親の役割とされているので、)家の初期費用に充ててくれと言って20万元を孫に渡す。しかし、子供はそんなもの受け取るなと孫にいうのだが、孫とお年寄りが話をするうちに、お年寄りの反省の気持ちや、家の費用というのは口実で、ただ孫や子供と一緒にいたいんだという言葉で、わだかまりが消えていくようなシーンもあった。

最後に、天津の娯楽大会にもっとも積極的に出たがっていたお年寄りは、末期がんを患っているのだが、どうしても天津に行って海を見たいと言う。その理由は、大会で満点を取った時の感想を聞かれた時に、「本当は日本に行って、日本の番組に出たい。自分には日本に行った娘がいるが7年間連絡も取れていない。この番組に出たら、テレビを通して娘に会えるかもしれないと思ったから来たんだ」と明かされた。

どれもこれも、家族同士の時間が減っていることを示すエピソードとして描かれているのだろう。中国はもともと家族のことは非常に大事にする国民性を持っている。それでも、経済発展により都市化が進み、多くの人が故郷を離れて都市で暮らし始める状況の中で、家族間の付き合いが減ってきているのだろう。都市化という経済的要因だけでなく、戸籍制度も関係しているのかもしれない。

こういう問題について中国人はどう考えているのだろう。普段から家族を連絡を取り合っており映画は誇張しすぎだと楽観視するだろうか。稼ぐためにはしょうがないと諦めているのだろうか。「単位」の中で生きてきた人たちが、1980年代に「市民」として生きていくことになり、その「市民」が「職場」という居場所から退出した時に、受け入れる「地域」や「家族」がどのように存在しているのだろうか。

全体的に、笑いあり、感動ありの、かなり良い映画でした。