世界都市研究

せっかくなので宿題の内容を簡潔にまとめておく。
・現代の意味での世界都市という言葉を使い始めたのは、1966年のピーター・ホール以来である。
・ホールは、政治、貿易、金融、情報、人材、人口の中心地として世界都市が発生していることを指摘した。
・1986年にジョン・フリードマンは有名な世界都市仮説を発表する。
・都市とグローバル経済は現在の労働力分業の結果である。カギとなる都市は世界の資本に影響力を有しており、市場の基点となっている。世界都市のグローバルコントロール機能は生産や雇用機構に直接影響を与え、本社機能、金融、交通、情報、高次サービス業が集まっている。世界都市は国際資本、国際移民の目的地となる。世界都市の出現は資本を以って生産を行う資本主義の矛盾と言える。世界都市は国家財政キャパシティーを超える。
・1991年にサスキア・サッセンは世界都市では本部機能、金融機能などの集積が行われるともに、それらの都市内住民のためのサービス業も発展すると指摘している。それらのサービス業を担うのは多く移民や女性であり、既に政治的発言権を発揮していると指摘した。
・マニュエル・カステルやテイラーは情報技術の側面から、都市間内の本部機能蓄積ではなく、都市間の交流が世界都市としての位置づけを決めるのだと分析している。
・これらの都市間ネットワーク論については、データの裏付けが難しいが、テイラー率いるGaWCなどが積極的な調査を行っており、現在の世界都市論の中心をなしていると言える。
・中国では世界都市論の紹介や自国の都市へのあてはめなどが研究の主眼。

(ここから下は学問ではなく、私見です。)

第12次5か年計画などによると、中国では、香港はもちろん、上海、北京が世界都市を目論んでいるらしいが、①大都市で発生している環境、交通などの都市問題を解決しないといけない、②人材の集積が図られていない、③上海、北京、そして香港の3都市間の役割分担はどうなるのか(世界都市理論を通じた認識だが、政府が世界都市を決められるわけではない)、④中心都市の高度産業化、周辺都市への工業移転を同時に行えるか(香港→広州、東莞、上海→蘇州、杭州、南京が実例)、⑤内陸都市へと産業、投資の移転を図るなか、沿岸都市へ経済管理機能を集中することができるか等が検討課題だろうか。

東京はホールの頃から世界都市として認識され、サッセンはロンドン、ニューヨークと東京の3都市を世界都市だと認識していたが、現在の停滞ぶりは著しい。貿易機能は言わずもがな、金融機能でも香港、上海(証券取引量)にまで負けている。日本経済調査協議会はアクセシビリティとリバビリティを上げる提言をしているが、小森雅彦も指摘している通り、そもそも外国人等に対する許容性(Tolerance)が不足している。この点で香港、シンガポールにはかなわないだろう。シンガポールは近年研究開発、高度人材誘致にも力を入れている。華僑、華人系のしたたかな両国(地域)と中国と言うとてつもない規模の国を両にらみながら、東京の経済力、人材力を維持しながら、文化力などの強みを存分に発揮する必要があると感じる。