市名売却

泉佐野市の市名売却案。
個人的にはとんでもない話だと思うが、賛成する人もいるようだ。

おそらく賛成派の意見としては、市名の売却による財政収入、権利取得企業による当地域への投資拡大、所在地の変更に伴う住所表示変更、システム変更などの行政費用、対応を迫られる民間企業、自治会などへの負担金を総合的に計算した上で、財政収入が上回る結果が出ればやればいいということだろう。短期的な観点からの判断だ。

都市研究をしている身としては、住民の地域に対する愛着が減るし、当該地域の過去からの歴史的な断絶が起きる。これらによる長期的な影響という、金銭で図りにくい悪影響が予想される。

もちろん豊田市など、企業の影響で名前を変えた例はあるが、これはその地域の実態、歴史に合わせて変えるものであり、今回の問題とはあまり関係ない。

もしも、京都や奈良、鎌倉が財政難のために、名前を変えるという話になるとどう感じるだろうか。財政という短期的な問題のために1000年の歴史を捨てるなんて判断はあり得ないだろう。(ちなみに中国では、洛陽など多少の期間名前の変更があったものの3000年、成都など全く名前の変更なく2000年続いている街がある。)

泉佐野という名前は和泉国から来たものだ。地元に長く続く企業などが買い取り、地域の官民一体となって振興を図っていくならまだ評価できる。泉佐野に本社のない会社、あるいは外国企業なんかが買い取ることにより、市(行政、民間企業、住民)一体となって、その地域に関係のない広告を続けないといけなくなる。ハイアール市なんかになったらどうするのだろうか。

個人的には、こんな提案はバカげている。ネーミングライツなんてものは、せいぜい数十年程度の寿命しかない建築物(球場、市庁舎、市民施設、道路、橋、パーキングエリア)などに限って検討すべきだと思う。