ある中国人学生の日本観

今日は、書くべきかどうか迷う内容だが、せっかくなので書いておこう。

ある中国人学生が日本語の勉強をしている時にモーリシャス人から彼女に質問をしていた。研究室には中国人と自分とモーリシャス人の3人。

モ「日本にいつ行く予定なのか」
ち「今のところ分からない」
モ「日本に行くことが決まってから勉強すればいいんじゃないか?」
ち「行くことが決まってから勉強していても遅い」
モ「何でアメリカには行かないのか」
ち「アメリカにも行きたいが・・・(聞き取れず)」
モ「日本に行くことに親たちは反対しないのか?」
(なんか変な質問になってきたな・・。)
ち「日本かアメリカかと言われればアメリカに行きたい」
モ「日本人と結婚することを許してくれるのか?」
ち「日本人と中国人では根本的なところで考え方が大きく異なる。それに昔日本は中国に嫌がらせ(欺负)をした。特に東北地方では日本人に嫌な思いをさせられた人が多いから嫌っている人が多い。」
モ「(自分に向かって)東北にはいかない方がいいよ」
(振るなよ)
自分「色んな中国人に会ってきたが、もちろん日本人のことを嫌っている人はいる。だけど人それぞれだ。」
ち「日本との関係は複雑だ。本音では嫌っている人が多い。東北にはいかない方がいい。」
モ「南京はどうなんだ?」
ち「南京も山東省にもいる。」
ち「昔日本人とスタジオを組んだ例があったが、深く交流しないようにしていた。」
モ「他の国でもそういう例はある。国交が回復してからも長い時間がかかっている。」
ち「民間の関係はまだいい。多くの中国人が小さいころから日本のアニメを見て育っている。民間の関係は問題ない。」
ち「テレビでもやっているが、日本は沖ノ鳥島を島と主張している。」
モ「中国人も日本製品をよく買っている。」
ち「日本製品はモノがいいからだ。中国製品はモノが悪い。」
といった感じ。

かなり居心地が悪かった。もちろん、自分も日中関係について相当考えてきたので、中国人の主張をそのまま肯定するほどバカではないが、学校の中での討論はなるべく避けている。理由は、中国人中心のクラスはクラス活動、党活動が頻繁に行われているため、変な噂が立たないよう慎重には慎重を期したいと思うからだ。モーリシャス人は気楽でいい。

まぁそれにしても、日本語を勉強していて、日本のアニメやドラマをしょっちゅう見ていて、普段自分に対しても親交的な彼女もそういう考え方をしているというのはとても参考になった。

上記のやり取りに関する自分の考えは以下の通り。
・日本と中国の間が複雑と言うのは紛れもない事実。全面的に理解することなど不可能。
・東北地方に行かない方がいいと言う意見には強く反対。中国は、歴史と教育の影響で、日本に対する嫌悪感が0%という地域はあり得ない。前に行った敦煌でも同じだろう。特に大連は日本駐在員も多いし、それほど反日ではない。
・民間の関係は問題ないと言う意見は、極めて普通の意見。日本における「公式見解」とほとんど変わらないレベルであり、結局、彼女本人の意見というものが形成されていないように思う。民間の関係がいいのに中国人が本音で日本人を嫌っているということは、「私」の側面は良好なのに「公」の側面で日本を嫌っているということと同一視できると思うが、これは周恩来の「日中戦争の責任はA級戦犯にあり、日本人の人民は悪くない」という意見と一致する。それ以上の意見を形成できていないのは大学内、中国内でしか過ごしていない学生だからではないか。

最後の部分が今回得た経験である。依然としてクラス内では慎重を期すことにしたいが、今度中国人とそういうことを話す機会になれば、それとなく「自分個人の意見は何なのか。民間の関係がいいのに、なぜ本音で日本を嫌うのか。」と聞いてみたい。
また一方で、周恩来の言葉の影響力は良くも悪くも絶大だったと改めて思う。日中国交回復の際のこの言葉がなければ、一般の日本人に対しても表立って批判する中国人がもっと多かったことだろう。


最後に、自分の今の考え方を書いておきたい。
・中国人が日本軍の行為に対して恨みを持つことはやむを得ないし、そのことに対しては日本人は謙虚であるべきである。
・そのことをいつまでも言ってくることに対して煩わしく思う日本人も多いが、それは共産党体制の正当性主張のために使われていることも多く、公的側面を持つ日本、日本人批判についてはある程度諦める必要がある。
・日本人は批判されることに弱く、中国人に日本批判をされると、個人的に批判をされている気になるが、中国人が批判しているのは日本の一面であり、あまり過剰な反応をしてはならない。また中国人は日本人だけでなく、民族間、地域間、階層間でも嫌悪しあうこともよくあることであり、日本人だけが嫌悪の対象になっているわけではない。
・南京や尖閣といった意見の異なる点については、国家レベルの外交問題であり個人同士で議論しても解決しない。ポツダム宣言の話など具体的な主張をしてきた場合はこちらも具体的に反論をするべきだが、中国で学生として暮らす限りはできるだけ避けるべき話題である。
・日本人は人の目を気にして自分の意見を言わないため自分の意見を持っていないと判断される傾向にあるが、中国人は人の目は気にせず自分の意見を主張するが公式見解に反することになると声が小さくなる傾向がある。

結局、中国人と理解し合うのはこれだけ触れ合っていても依然難しいということだ。

それにしても、今週は色々と本当に疲れた。