郊外研修

今日は昌平区という、北京の市内から北側の郊外へ研修。
ここには回龍観と天通苑という有名なニュータウンがある。
公共施設の整備標準を作る前に作られたニュータウンであるため、住宅機能だけが密集しており、かなり批判を浴び始めているところだ。
今日同行した昌平区の職員の話によると、この2地域で70万人が住んでいるとのこと。規模だけ言うとものすごい。多摩ニュータウンと多摩田園都市を合わせた数以上の人口だ。

その他、未来科学技術園(産業団地)や行政サービスセンター、航空博物館などを見てきた。海淀区の中関村と結びついて科学技術の発展を目指すことにしているらしい。かなり大規模の産業団地を急ピッチで作っており、こういう工事を急速に進められるのは、今の中国の勢いを表していると言えるだろう。

日本にも筑波を始めとして色んな都市で研究都市や学園都市は作られたが、ここの規模はつくばを上回る。しかし、一点気になったのはここに入る企業と言うのはどうやってきまるのだろうかという点。職員は国家の機関が決めると言っていたが、どういう基準で決まってくるのだろうか。今入る予定の企業は国有の大手企業ばかりだった。よくよく見るとエネルギー関係に結びつく企業が多かったが、日本もそうなのだが、こういう産業団地で集積のメリットを出すためにはそこに入る企業の選択も重要。

また、今まで色々な都市開発の計画を見てきて、今日初めて感じたのは、地区単位(点)での計画は立派なのだが、線や面での計画が不十分ではないかということ。
たとえば今回の未来科学都市も、その地区内に国際学校、病院、ショッピングセンターを備えた総合開発計画を作っているが、その周りの地区(ここに元々住んでいた人たちを含めて)とここの地区との関係はどうなるのだろうか。
ショッピングセンターは交通に便利な地下鉄駅の近くに配置されるなど、都市計画の基礎は抑えているが、そこに勤める人はインターナショナルスクールがあるようなこの高級地区に住めるわけではないので、地下鉄かバスで通勤してくることになる。
その場合、彼らはどこに住んでおり、ここの地区のショッピングセンターに働きに来るかどうか。仮に同じ路線に同様のショッピングセンターがあった場合、労働者確保の競争が行われることになるが、小売企業とそういった調整までしているだろうか。もちろん、今の中国においては都市の労働力はいくらでも調達でき、人件費など微々たるものであるから、労働者を如何にして安く確保するかなど考慮する必要がないのだろうが、所得格差の問題に本格的に取り組むとしたら数十年後にはどうなるだろう。日本のニュータウンでも商業の立地は激動を経験している。多摩センターにあった多摩そごうの開店から閉店までの動きも研究してみたいと思う。

いずれにせよ、良くも悪くも中国ではものすごい勢いで都市開発が進んでいる。多くの地域は現在建設中だ。2005年に初めて上海に行った時はクレーンの数がかなり多く、開発の勢いに驚いたが、今中国の全土で起きている建設ラッシュには、自分は既に懐疑的な気持ちを持っている。

あるクラスメイトは「今は地価の上昇がすごいから10年で建物の建て替えをしてしまうこともできる」と言っていたが(もちろん彼はそれに対して批判的である。)、高層ビルも仮に空き室ばかりになってしまうと巨大な粗大ごみである。

ある日本企業の社長が「投資の勢いはクレーンの数を見ればわかる」と言っていたらしいが、その地域が持続的に発展するかどうか、結局その地域の活気、そして活気を生み出す多様性、流動性にかかっている。
急速なハード整備に躍起になっている中国に、バブル後莫大な財政赤字を抱えた日本は何をアドバイスできるのだろうか。